‘主観は変化する’を見事に表している

先日、東京のSOMPO美術館にて《モーリス・ユトリロ展》を鑑賞しました。

これまでにユトリロの名前は知っていたし、フランスの街並みを描く画家という認識もありましたが、ユトリロについて詳しいことは今回初めて知ることができました。

1900年代初頭に活躍したユトリロ…生い立ちや生涯について理解を深めながら作品の変遷を見ていくと、人間の‘主観’とは環境や経験によってこれほどまでに大きく変化していくものなのだ、という驚きを感じました。

ユトリロの生い立ちは決して恵まれたものではなく、若かりし頃からアルコール中毒を患うなど決して明るいものではなかったようですが、そんな彼の人生の終盤には心を許せる伴侶にも出会い71年の生涯(当時としては長命)を全うしました。

 

1 モンマニー時代(1910)に描かれた《ラパン・アジール》

 

2 色彩の時代(1927年)に描かれた《ラパン・アジール》

 

3《雪のラパン・アジール》(1936〜38頃)

 

4《クリスマスの花》(1941年)

 

1、2は同じ対象物を描き、ユトリロ自身の主観が大きく変化を遂げている26歳と43歳の作品です。

まるで別の人物が描いたように、二つの作品は見事に変化を遂げています。

 

晩年に心を許せる伴侶と出会った後に描かれた3では(ユトリロ54歳頃)雪の情景からユトリロの心の静けさを感じます。

そして、4では(ユトリロ58歳)珍しくも、それまで街並みの風景だけを描いてきた彼が伴侶にプレゼントしたお花を描いています。

 

 

先月のアクトホール企画《ピアノカーニバル》にて、私さかい自身が演奏したのは『 Je te veux/エリック・サティ』です。

今回の展覧会で、ユトリロの母親(画家シュザンヌ・ヴァラドン)とエリック・サティとは関わりが(近しい仲で)あった…ということを知りました。

また、半年ちょっと前に観た《ロートレック展》のロートレックとも画家仲間であったユトリロの母ヴァラドン。

日々の活動の中で知り得る点と点とが結びついていく…そのような様々な発見がおもしろいです😊

 

絵画のみならず、音楽も‘主観’を表現することで成り立ちます。

自身の‘主観’の変化を感じる(意識する)こと…を頭の片隅に置いておこう!と感じた、今回の《モーリス・ユトリロ展》でした。