僕の宝物〜年中さんHくん

 

さかいピアノ教室(松本市)に通い初めて3ヶ月目のHくん(年中さん)は、エネルギー溢れる元気いっぱいの男の子です。

毎回のレッスンでは、始めのご挨拶をすると『今日のレッスンではどんなことをするんだろう?』とキラキラと瞳を輝かせ、期待の表情で私を見つめます。

レッスンが始まると、小さな身体で一生懸命に一つ一つのレッスンメニューをこなします。

歌う時は心から楽しそうに歌います。リズム活動では全身を使って全力で動きます。ピアノを弾く時は鍵盤に食いつくような集中力です。

ゼンマイ仕掛けのお人形のように、くるくると表情を変えて動きも活発なHくんです。

 

先日のレッスンのことです。

レッスンが一段落するとHくんが、

「ポケットに大事なのが入っているんだ。見せてあげようか…」

ズボンのポケットからもそもそと何かを取り出し、小さな手に隠しています。

「僕の宝物だよ!」そっと小さな手を開くと…

“カタツムリのから🐌”と“キレイな小さな石🪨”が手のひらに乗っていました。

Hくんは大事そうにその二つの宝物を私に見せてくれて、

「この石は宝石だよ✨」と大切なものを見るその目は愛おしさに溢れ愛情たっぷりの表情です。

近くでお母様は、

「毎日お洗濯する時、ポケットから何が出てくるのかと…😅」

そう語りながら、Hくんのあらゆる興味の矛先をおおらかに見守っていらっしゃるお姿が素晴らしいと感じました。

 

ピアノ演奏で音楽を表現する時には、ピアノの音に心を乗せて表現することが必要不可欠です。

心を伴わないピアノの音は、時に不快な音になってしまうことさえあります。

小さな子供の時から、身の周りのいろいろな物に興味を持ち、多くのことに感動し、あらゆる物を慈しむ心が、いわゆる情緒の発育につながって行くと感じています。

ピアノを習いに来てくださる生徒さんには、ピアノ演奏の技術的な習得だけを目的とするのではなく、日々の生活の中でたくさんの経験を積み重ねていただきたいと思っています。

一見ピアノ演奏には直接関わりがないように思えることでも、実は全ての体験やそれに伴う感情の変化の積み重ねが、ピアノ演奏者の大切な表現力に繋がっていくのです。

これからもHくんには、日々の生活の中でたくさんの宝物を見つけて欲しいです。

一つ一つの宝物がHくんの心の栄養となることでしょう。

ピアノ演奏の技術の向上とともに、その心をピアノの音色に乗せることができる素敵な表現者になって欲しいと思っています。